恋におちて
「あのさ、さっきから会話がつつ抜けなんだけど。そういう私的なことは営業時間外にやったら?」


カウンターの一番端で小声で話していたつもりだったけど、右の1つ席を開けただけのお客さんには聞こえていたらしい。


「す、すみません……うるさかったですね」


声をかけてきたお客さんに向かって頭を上げた瞬間驚いた。

不機嫌な低い声だったため強面の顔を想像していたのに、そこには女王という形容が似合いそうな美麗な男性が座っていた。


「聞こえたついでに言わせてもらうけど、あんた、自分を捨てた男がもしかしたらまた戻ってくるかもとか、嫌われたくないとか思ってんだったらその考え今すぐ止めとけよ。そいつは戻ってこないし、仮に戻ってきたとしてもうまくいくはずがない。同じ過ち繰り返すだけだからな」

「わたしは別に……」

「あっそ」


見ず知らずの男に図星をつかれて反論できなかった。

そう、別にお人好しとかなんかではない。

一馬も大変だからなんて言ったけど、本当は嫌われるのが怖いだけ。

自分でもバカだなって思うけど。


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