姐御な私と無口なアイツ。
だめだ……可愛い。
そんな姿を見ていると、じわりと鎌首をもたげ始める、もう少し意地悪をしたいという心。
「いきなりじゃなかったら良いのか?」
そう背中に問いかけると、そんな返事が返ってくるとはおもっていなかったのか、ぴくり、と麻奈の肩が揺れる。
「え……?う、うん、そういうことになる……のかな」
「予告すれば良かったってこと?」
「え?」
思わず、なのだろうか。麻奈が聞き返しながらようやくこちらを向く。
「え、えっと……そう……なのかな?いやそうじゃなくて、何かこう……流れとか……?」
麻奈が自分でも首を傾げながら何か言っているが、俺はそれを無視して麻奈の耳許で囁いた。
「じゃあ言う。するよ」
「え?」
状況が把握出来ないようで、麻奈は形の良い目をぱちくりとするばかり。
……本当に、どうしてこんなに可愛らしいんだろう。
幼い頃からずっと見てきたはずなのに、こうして彼氏になって初めて見た、知らない一面がこんなにあったなんて。
強がりで責任感が強くて、言葉も真っ直ぐ迷いがないのに、本当は甘えるのも人に頼るのも苦手な、誰よりも弱くて脆い俺のお姫様。
──ずっとこうして、側にいて。
そんな願いを込めながら、そっと、麻奈の細い顎を掬い上げ……。
可憐なその唇に、俺は静かにキスを落とした。