恐愛同級生
「つーか別に弁償なんてしなくていいから」
「そんなわけにはいかないよ!あたしがぶつかったから壊れちゃったんだし」
必死に食い下がる。
「もしも、の話だけど」
「うん?」
「もしこのスマホの液晶が最初から割れていたとしたら?」
「えっ?どういうこと?」
首を傾げて考え込むあたしに三浦君は呆れたように笑った。
「最初から壊れてた物をお前のせいにしてわざと弁償させようとしてるかもしれないとか考えないんだ?」
三浦君の言葉に目が点になる。
「うーん、確かに言われてみればそうだね。だけど、三浦君のスマホが床に落ちて壊れた音も聞いたもん。それに、もし本当に弁償してほしいなら『弁償しなくていい』なんて言わないでしょ?」
笑顔でそう答えると、三浦君はハァと小さなため息をついた。
「相手のこと信じすぎ。なんで疑わないんだよ。俺とお前って今まで関わり合いなかっただろ?」
「それはそうだけど、三浦君を疑う理由なんてないから」
今までだってそうやって生きてきた。
そもそも人を疑うことはない。
『愛されたいなら自分から愛しなさい』
『信じてもらいたかったら相手を信じなさい』
『疑われるのが嫌なら相手を疑うのはやめなさい』
そんな両親の教えもあったけど、今まで人を疑わずに生きてこられたせいもあるのかもしれない。
幸せなことにあたしは人に恵まれていた。
一人っ子ということで両親の愛情も独り占めしてきたし、誰かに嫌なことをされたこともなく、平凡な幸せを掴んできた。
「まぁ、いいか。俺的には関わり合いもてて正直ラッキーだったし」
すると、三浦君はふっとやわらかい笑みを漏らした。
「ラッキーって?」
「俺、前からお前のことが好きだったから」
「ふぅん……。そうだったんだね」
ニコッと笑って三浦君の言葉にあいづちを打ってからハッとする。
え?前からあたしのことが……好き?
「って、えっ!?嘘……!!」
「いや、マジ」
「えー……、あ、ありえないよぉ~!!あははは、三浦君、からかわないでよー」
こういう時、どう答えたらいいのかわからずにあははっと笑い飛ばすことしかできない自分のボキャブラリーのなさが嫌になる。