恐愛同級生

絶対に転ぶと思っていたのに。


言葉にならなかった。

彼の反射神経の良さに驚いて、目をぱちくりさせて黙りこむ。


「わりぃ。今、前見て歩いてなかった。ケガしてねぇか?」

彼のその言葉で魔法が解けたかのように、ハッと飛びかけていた意識が戻る。


「う、ううん!!こっちこそぶつかっちゃってごめんなさい。あたしは大丈夫だけど、ケガしてない?」


「あぁ、全然」


「よかった……。あっ、助けてくれてありがとう。本当に助かったよ」


ニコッと笑いながらふと階段に視線を落としたあたしは、思わずあっと口を開けた。

彼の足元の辺りに液晶画面を下にして転がっている黒いスマホ。

あたしが彼に腕を引かれる前に聞こえた何かが壊れたかのような嫌な音。

不吉な予感におそるおそるスマホに手を伸ばすと、予想通り液晶がクモの巣状に割れていた。


「うそぉぉ……。うわぁぁ……本当にごめんなさい!!」


顔を歪めながら頭を下げるあたしの手から彼はそっとスマホを受け取った。
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