僕達の冷たい戦争
南風
暑すぎる太陽の光は、キラキラとした海に反射してつい目を細めてしまうほど眩しかった。けれど、舟に揺られながら海の香りのする南風は最高に気持ちがいい
舟には大きな荷物と若い娘とその父親らしき2人、舟漕ぎ1人が乗っていた…。
『気持ちぃ』
若い娘がため息をしながら海に見とれていた。
『おい、落ちねぇように気をつけなぁ』
舟漕ぎが、舟から身を乗り出して海に手をピチャピチャと遊び初めた娘に注意した。
(ったくよぉ 聞いちゃいね~や)
心の中で小言を言いながら、父親のほうを見た。
父親は、美しい海を見てはしゃいでいる娘とは正反対に、浮かない顔をしている。舟漕ぎは、船酔いしたのだろうと、舟を一層懸命に漕ぎ始めた………
しばらくして、舟は島にたどりついた。
『どうも、長い距離をありがとうございました。』
『ありがとうございました。』
父親と娘が深々と舟漕ぎにお辞儀をした。
舟漕ぎも、そんな親子に軽くお辞儀をして海に消えて行った。
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