僕達の冷たい戦争
舟漕ぎを見送ったあと親子は新しい新居へと歩き始めた。
『お父さん…………本当にここに来てよかったの?』
          この親子は京都で、「芸者」をしていた。父親はそれを仕切り、娘はお弟子さんに舞いを教えながら、舞台で美しい舞いを披露していた。特に父親の三味線を弾きながらの娘の舞いは、評判がよかった。
           『あぁ、前から決めてた事なんだ。あいつらには可哀相な事しちまったがな………』
頑固な父親だったが、お弟子さん達には、小さい頃から娘と同等に踊りを教えていた。 血が繋がってなくとも、我が子のような存在。やはり京都に置いて行ってしまった事に、胸が痛むようだ。
それからしばらく沈黙が続いて新居についた。
『俺は、荷物整理してっからご近所の挨拶頼むぞ』
そう言い終えると、京都の土産を持たせて新居の玄関を閉めてしまった。
『あっちょっ…んもう………』娘はため息を吐きながら、お隣りさん家にむかった。
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