もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
「…………なるほど。お前とお前で良いや、入れよ。」
自分がコートに立った時の反応。
ある程度のレベルを越えることで分かる相手の存在感。
その片鱗を見せていた仁木と福井が選ばれた。
「お前等サーブで良い。始めようぜ。」
「はぁ、はぁ、はぁ。」
吉川が三階を走り抜け、目的の教室へとたどり着く。
「さ、佐野くん!!」
扉を開けた吉川が見たのは、いつになく真剣な2人の表情だった。
「吉川さん……」
「なんか今、テニスコートに変なヤツが居て、佐野翔太を出せ。って。」
翔太の表情が更に険しくなる。
「どんなヤツだった?」
翔太はもう大体の検討は着いていた。
「背の高い不良みたいなヤツ。それで右耳に――」
「……十字架のピアス。」
「えっ、うん。……佐野くん知ってる人なの?」
翔太は最後の吉川の質問に答える間もなく走りだした。
「アヤ、おまえはここにいろ。」
そう言って幸助も駆けていくのだった。