嘘つき偽彼氏


誰もいないこの道。


人通りが少なくて

夕暮れで薄暗いこの場所。




ずっとずっと好きな子に

彼氏が出来たと言われて



少女マンガとかなら

強引にでも、好きな子を振り向かせようとするだろう。


腕を引いて

自分の腕で抱きしめて

耳元で「好きだ」

なんて、恥ずかしい言葉を吐いて


そして

驚く君にキスをして。



そんな強引なことが

今、ここで


出来るかも知れない。



なんて…………


バカなことを考えた。



そして、俺は周りを見渡して
誰もいないことを確認する。


「美夜」


まだ拗ねている美夜の名前を呼ぶ。


すると美夜は、ちらりと俺の方を向いて
すぐに視線そらしてきた。



「名前呼んでるんだからこっち向け」


そう言って無理矢理にでも
美夜を俺の方に向かせる。


「なに?」


口を尖らせて、また上目遣いで
俺のことを見る。


なに?


なんだよ、その顔。


ほんと


自分の姉ちゃんながら


可愛すぎる。



「美夜……、その顔

反則だから………」



「え…………?」



俺は自分の両手で美夜の小さな顔を包み込む。


そして


ばくばくとうるさい心臓が
美夜にバレないように

ゆっくりと、


美夜に近づいた。















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