たったひとりの君にだけ

ったく、やめてよね、人の心読むの。


「次、いつラーメン食べます?」


けれど、人知れず心の中で膨れっ面状態の私には都合よく気付かずに、さりげなく次の約束を取り付けようとする。

相変わらず厚かましい。
まだ、今日の一杯を食べ終えて30分も経っていないのに。

あの、私まだ、お腹一杯で今は食べ物のことは考えたくないのですが。

第一、本来ならば食事なんて一人で食べようが二人で食べようが数百人で食べようが、味に違いはないはずだ。
作り手がわざわざ人数を把握して作り分けしているわけがない。

けれど、何故か一緒に食べる相手次第で感じ方が変わってしまうのは、これまでの短い人生の中で少なからず実証済みだし、食べた直後に感想を伝え合うのは何気に楽しいものだ。

本当に不思議だ。
摩訶不思議な現象だ。


「……まぁ、暇なときね」

「じゃあ、暇なときメールします」


といっても、俺はほとんど暇です、と声高らかに暴露する高階君だけれど、私も大して変わんないよ、とは言わないでおいた。

次の約束はもう少し先にしておこう。
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