たったひとりの君にだけ
からかわないでほしい。
からかっていないと言うのならふざけないでほしい。
万が一本気だとほざくのなら、その神経を本気で疑う。
けれど、半ばどころか100%呆れて睨みを利かせた私の耳に、届いたそれはまさに鶴の一声と褒めるべきだろう。
「……芽久美さん」
救われた。
救われました。
ありがとうございます。
大変助かりました。
背後から聞こえた声に、私は振り返った。
「あ、ごめん」
「いえ、お知り合いですか?」
「違う」
「お前、相変わらず酷いな」
口を挟む樹を再度睨む。
街灯の真下、コイツの全てに腹が立つ。
それは勿論、5日前の非常識が引き金で。
これ以上、無意味で余計なことは口にしないでよ。