たったひとりの君にだけ

からかわないでほしい。
からかっていないと言うのならふざけないでほしい。

万が一本気だとほざくのなら、その神経を本気で疑う。

けれど、半ばどころか100%呆れて睨みを利かせた私の耳に、届いたそれはまさに鶴の一声と褒めるべきだろう。



「……芽久美さん」



救われた。
救われました。

ありがとうございます。
大変助かりました。

背後から聞こえた声に、私は振り返った。


「あ、ごめん」

「いえ、お知り合いですか?」

「違う」

「お前、相変わらず酷いな」


口を挟む樹を再度睨む。

街灯の真下、コイツの全てに腹が立つ。
それは勿論、5日前の非常識が引き金で。

これ以上、無意味で余計なことは口にしないでよ。
< 123 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop