たったひとりの君にだけ

「メールは頻繁に来るの?」


バッグに入れていたiPhoneが着信を知らせたらしい。
画面から目を逸らさずに、瑠奈は私に問い掛ける。
そのつまらなそうな様子から、恐らくメルマガか迷惑メールといったところだろう。


「毎日ね」


と言っても、連絡先を交換してまだ4日しか経過していない。

フォルダに溜まったメールは10通未満。
2桁にも到達していない。


「どんなメールが送られて来るわけ?ストレートに『好きだ!』とか?」

「見る?」

「見る!」


興味津々に前のめりになったところで、バッグから最新のiPhone5S(32GB)を取り出す。

メールを部外者に見せる趣味はない。
普段なら、いくら親しい間柄でも人様にメールを晒したりはしない。

だけど、言葉で伝えるよりも、その可愛いパッチリお目々で確認してもらった方が早いと思ったのだ。


「はい」

「どれどれ」


iPhoneを手渡し、私はふうっと息を吐く。

先に言っておこう。


期待を裏切ってごめんよ。



「……『豚骨ラーメンなう♪』?……は?」



うん、予想通りの反応をありがとう。


「え、は?へ?何コレ」

「ちなみに写メ付きね」

「いやいやいや。豚骨ラーメンの写メなんかどうでもいいんだよ」


そして、私はそんなにラーメン好きなわけじゃないわ、と付け加える。
ついでに、太るんだよ、高カロリーなんだよ、と吐き捨てた。

ラーメンに謝ってほしい。

確かに、大学からの付き合いでも、瑠奈とラーメン屋に行ったことはほとんどない気がする。

だけど、それらのリスクを冒したって、やめられないくらい美味しいからラーメンは素晴らしいのだ。
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