たったひとりの君にだけ

どうしてそんなことが言えるのだろう。

それよりも。


どうして再会しなければならなかったのだろう。


もう二度と会うことはないと、頭の片隅にすらなかった相手に。

どうして、こんなに惨めな気持ちにさせられなければならないのだろう。


後悔するしか他にない。

いくら事実でも、わざわざ口にする必要がどこにある。


こんな思いをさせといて、本当にこの男は私とやり直したいと思っているのだろうか。


信じない。

忘れられなかったなんて大嘘だ。


「……樹、早く行ってよ、もういいから早く」

「でも、高階君、それで終わりなんだよ、オ・ワ・リ。それに、芽久美は近々俺と一緒にフランスだから」


私の声は少しも聞こえていないのだろう。

そうとしか思えない。
やめる気が微塵も感じられない。


誰がアンタとフランスに行くか!

100億積まれたって御免だわ!
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