たったひとりの君にだけ

「……言いたいことあるなら言えば?」


どうせ、この10分そこそこで、聞きたいことは山積みだろう。
後日根掘り葉掘り聞かれるよりは、今この瞬間に必要最低限であしらいたいと思う。

だって。


こんな女、誰だって嫌でしょ?


「ルームシェアって誰とですか?」


不意を突かれた問い掛けに。
お口をぽかーんと開けたのは他の誰でもない私だった。

せっかくわざわざ身構えたのに、拍子抜けもいいとこだ。


第一声。

突っ込みどころはそこですか。


「芽久美さん、ルームシェアしてたんですか?」

「……なんで」

「だって、さっき神村さん、俺にルームシェアのお相手かって聞いたじゃないですか。今は無理ですよね、1LDKだもん。実はあの部屋にもう一人いるとかナシですよ。ちなみに守護霊はカウントしません。じゃあ、昔してたんですか?俺も大学4年間ルームシェアしてたんですよ。結構楽しいですよね、ルームシェア!」


威圧感はきっと、幻だったんだと思う。

笑顔でマシンガントークを繰り出すその姿に、閉じかけたお口がまたもや開いた。

わからない、この男がわからない。

どこをどう、どこからどうやってこの場を解決すればいいのかわからない。
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