たったひとりの君にだけ

案の定、深く重い溜息が漏れる。

この際、そういうことにしてしまえば一番手っ取り早いんだと思う。

身元も住居も、不可抗力で全てバレていたとしても。
結局は、隣の隣の隣の隣の住人ってだけで、それ以上もそれ以下もないんだし。

余計なことは口にすべきじゃない。
自分の首を絞めるだけだ。

けれど。


目の前の、純真無垢な笑顔が眩しい。


だから、こんな私でも。

そうしちゃいけないんじゃないかって少しでも思ったのは。

少なからず、樹から解放してくれたからなんだろうね。
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