たったひとりの君にだけ

「……嘘だよ、そんなの」

「へっ?」


ボソッと口にした途端、極上のマヌケ声が聞こえた。

それはもう清々しくて思わずツッコみたくなるレベルだけれど、ここは大人になろうと思う。



「……ルームシェアなんてしたことない」



再度、誰が見てもわかるほどに驚く高階君に、私はさらっと言ってやる。
勿論、視線なんてものは合わせず、そっぽを向きながら。
もういいや、というわけではないけど、観念したように本音を零してみる。


「他人と暮らすなんて無理。住んでる場所なんて教えてない」

「え?ど、どういうこと」

「嘘吐いてたの。ルームシェアしてるから家には来ないでって。同居人が他人が来るの嫌がるからって」


呆気に取られているのか、なんなのか。

わからないならわからないままでいいやと思い、私は続けることにする。
< 139 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop