たったひとりの君にだけ
「……どうせ、別れるんだから」
もう一度、同じ台詞を口にする。
望むのならば、何度でも言おう。
“どうせ別れる”
それだけだ。
「……じゃあ、フランスっていうのは……?」
どうして以来の声は絞り出したように小さくて、強気の私とは大違いだった。
「近々フランスって嘘ですよね?」
それを充分わかっていても、再度不安げに問う彼に非情にも私はバカじゃないのと言い返す。
「あんなのアイツの口から出任せ。樹とフランスなんて天地がひっくり返ってもありえないから」
100億どころか100兆積まれたって言いなりになんかなってやらないし、やっぱり目的もないまま生活を変えるのは至難の業だ。
いくらエッフェル塔が見える洗練された住居が用意されていても、私はそこで大人しくディナーを作って奴の帰りを待つような女ではないし、例えショッピングやエステ三昧を許可されても望まない。
何故、好きでもない人と?
私はまだ、あらゆる刺激を受けてバリバリ働いていたいのだ。