たったひとりの君にだけ
「そうですよね。うん、そうだ。そうに違いない」
しつこく相槌を打つ彼に、ほんの僅か苛立って返す。
「もうっ、さっきからそうだって言ってるじゃない」
「わかります。俺も日本がいいです」
「そうよ。なんだかんだ言って生まれ育った国が一番暮らしやすいの」
なかなか変えられるものじゃない。
慣れとは素晴らしくもあり恐ろしいもので。
くだらないとわかりつつ、ついついネット記事のコメントを見ることも。
手持ち無沙汰になると、決まって枝毛や切れ毛を探してしまうことも。
そして。
きっと、私が。
長年の願いを撤回出来ずにいることも。
「その通りです。……それに、すぐ傍にラーメンがない生活なんてありえないんですもんね」
らしくもなく一瞬、微かにセンチメンタルな気分に浸っていたのに。
それはぐいっと力強く思い切り、握力100kg超えの超人に引っ張られたような感覚だった。
案の定、耳を疑う。
あぁ、空耳だと思いたい。
今、なんて言ったの。
と聞き返すよりも。
あれ、何処かで聞いたことのある台詞だわ。
と思ったのが何よりの証拠だ。
思わず彼を凝視した。
「いくら日本食がブームで全世界に広まってるって言っても、歩いて10分、すぐそこにラーメン屋があるとは思えないし、あ、そもそもラーメンを日本食って言ってもいいかどうかは定かじゃないけど、でもやっぱり日本で食べるラーメンは格別だと思うんですよね」
偶然?
やっぱりただの偶然なの?
ラーメン談義を繰り広げたいだけなの?
「だから、芽久美さんがすぐ傍にラーメンがないと嫌だって言うのは凄くわかります」
偶然じゃなかった!