たったひとりの君にだけ
何処かで聞いたことがあるなんてそんなの当たり前だ。
だって私が言ったんだから。
それでも。
思わず睨む。
睨まざるを得ない。
それが正しい行動かどうかなんて知ったこっちゃないけど、とりあえず反射的にそうしていた。
これはもう仕方ない、そう、開き直った上で。
「……なんで知ってるの」
そして、努めて冷静に、唸るような低音で問い詰めるのも当然で。
本当に、あなたはなんでそんなことを知ってるんですか。
まさかあの場にいたの?
平日でしょ、有休でも使ったの?
いや、待って、そんなの絶対ありえない。
だって、あの日、あの朝、あなたは私と一緒にマンションのエントランスを出たはずでしょ?
もしかして午後休でも使った?
でも、それにしては瞬間移動並みにあの場にいるの早くないか?
すると、一人迷宮入りしてなかなか抜け出せそうにない私に、高階君はボソッと呟いた。
「……キオナで話してた相手って、やっぱり神村さんだったんですね」
あぁ、もう、ダメだこりゃ。
聞き捨てならないことこの上ないわ!