たったひとりの君にだけ

道端で言い合う私達は、一見、人前で別れ話でもしているバカなカップルに見えるかもしれない。

しかも、明らかに話し合いは平行線だ。


「……ありえない」


疲れはピークに達している。

私もかなりの意地っ張りだけど。
それでも間違ったことは言っていないのだから、みすみす意思を曲げるつもりはない。


互いに一歩も譲らない。
決して交わらない私達が。
つい30分程前、一緒にラーメンを食べていたなんて嘘のようだ。


そんなことを思っていると、高階君はふうっと、冷たくも温かな息に紛れさせて、私の名前を呼んでいた。

今度はなによと重苦しい吐息で返事をしてみると、彼は明るくこう言った。




「じゃあ、芽久美さんの優しさは、俺だけが知っておきます。そういうことでいいですよね?」



最大限の譲歩のつもりなのか。
顔を上げた先、微笑む彼を見て、私は心底ついていけないと思った。

そんな無理矢理な締め括りってアリなの?

どうしてそういう結末になるのだろう。
凡人の私には理解出来ない。

けれど、多分もう、何を言っても、貸す耳なんて持ってくれないんだと思う。



「……もういいよ、それで。わかりました~。はい、もうこの話は終わりね」



わかりやすく両手を挙げて、形ばかりの降参を示す。


きっと、今までのツケが回って来たんだと思う。

なかなか頷いてくれないことも、元彼の意味不明な言動に振り回されていることも。


もしかしたら。

年末年始に風邪を引いたことさえも。
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