たったひとりの君にだけ
全ては私の身勝手の所為で。
そう思って諦めることにした。(勿論、この場は、だけど)
投げやりで、この上なく失礼な態度にも彼は変わらず笑う。
多分もう、どう振る舞ったって、やっぱり彼には何ひとつ効果はない。
つまりは時間の無駄だったってことでしょうね。
「……ったく、案外頑固だよね!」
そう言って、私はとうの昔に通り過ぎた駅へと踵を返す。
後ろから駆けて来る音がする。
そして、そっと隣に並んだ。
「それに、口のうまい樹に喧嘩売るなんて初めて見た。私だって丸め込まれることあったのに」
といっても、初対面で何も知らなかった彼にしてみれば仕方のないことだけど。
しかも、言い淀むことがあっても、結果的に見ればイーブンだった。
譲らない。
尻込みしない。
怖いくらいにストレートで怖かった。
「俺だって滅多に怒らないですよ。でも、芽久美さんを侮辱してる感じがしたし、好きな人を邪険に扱われていい気分する人なんていないですから」
さらっと言ってのけるこの人は、小悪魔か天然記念物か。
あ、絶滅危惧種もありえるな。
「……そりゃどうも」
またもや適当にあしらって、私は一足早く定期をかざして改札を抜けた。