たったひとりの君にだけ

心臓がドクドク波打っていた。
変な汗が流れて来そうなことに気付く。

私はお先しますと早口で言って、足早に受付へと向かった。


エレベーターを待つ間も、胸騒ぎは止まらない。
落ち着かなくてしょうがない。

iPhoneをチェックしても着信はゼロ。

第一、彼が私に対して、急用という言葉を使うような内容が、私達二人の間にあるとは到底思えないのだけれど。

もしこれで、『ラーメン食べに行きましょう!』なんて誘いだったとしたら、人目も憚らず本気で殴ろうと思う。

右手を負傷したら治療費請求も厭わない構えだ。
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