たったひとりの君にだけ
そして、1階へと到着したエレベーターから早々と脱出する。
だけど、キョロキョロと周辺を伺ってみても、高階君らしき人物の姿は見当たらない。
もしかしてトイレ?という想像すら脳裏をよぎるなか、私は受付へと歩いた。
だけど、やっぱり私は神様とやらに嫌われているんだと思う。
今週一週間を乗り切った私の耳に、信じられない声が届いたことが確固たる証拠だ。
「え~、21歳?若いね。俺と10も違う」
それは憎たらしいほど耳障りな声だった。
視界には受付の横で、台に肘をつきながら話し掛ける一人の男。
『可愛いね』と言われ、頬を赤らめる受付嬢は既にデレデレのご様子で。
私は睨みを利かせるしかなかった。
そして、ようやく立ち止まった私に気付く。
「お、来た来た」
片手を挙げて、笑みを浮かべる。
なんなの。
どうしてここにいるの。
意味不明も程々にしてほしいんだけど。
「早かったな」
“早かったな”?
その瞬間、私は事態を把握した。