たったひとりの君にだけ

「どういうこと!?」


瑠奈には全てを白状していた。

年始早々風邪をこじらせたことも、樹の思惑で再会したことも。

そして、高階君と3人で会ってしまったことも。

それは勿論、問い詰められた末で。
だからこそのこの反応なんだと思うけれど。


「ねえってば!」

「……瑠奈、鼓膜破れる」


詰め寄る彼女に冷静に返すと更に罵倒される。

この状況で、そっちも冷静になってよと頼むのは酷かもしれないとは思う。
この際、胡散臭い顔で笑う男なんて放って置けばいい。


「なんでここに神村さんがいるの?なんで手なんか振ってんの?なんでニコニコ笑ってんの?」


質問攻めに遭うけれど、どこからどう説明すればいいものか。


「しかも相変わらずのイイ男だし」

「それはない」


それは光の速度で否定する。
ありえない冗談は笑えない。


「え、もしかして二人で会う約束してたの?」

「はぁ?」


だから、ありえない冗談は笑えないんだって。


「ヒドイなぁ、私と約束してたくせに~」

「違うから」


彼女が本気じゃないことくらい、声色で充分わかるけど。
それでも今この状況で、その発言は不謹慎にもほどがある。

キリッと細目で彼女を睨む。


「……私がただの一度でさえ瑠奈との約束を破ったことがある?」

「え~、わかんない」


惚ける彼女に脳内で『逆でしょ!』と突っ込む。
かわいこぶって言われたところで許してなんかやらないけど。

こちらは18の春に出会ってから、何度ドタキャンを喰らったかわからないほどなのに。


「……とにかく。これは不可抗力」

「そうなの?ホントに?」

「なんでそこで疑うの。アイツの身勝手な話は、前、電話でわかりやす~く説明したでしょ。待ち伏せされてただけだから」


しかも、超絶非常識な方法で。
高階君の名前まで使って。

私の焦りを返してほしい。
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