たったひとりの君にだけ
「もしかして、この後二人でご飯に行く予定だった?」
そして、私ではなく、瑠奈を見つめたままで。
素直にうんと頷く彼女に、樹はこう切り出した。
「ついでだから俺も混ぜてよ」
そうだった。
こいつの当初の目的は。
「勿論、俺が奢るよ」
きっと、いや恐らく確実に。
この中で一番の高級取りの樹には容易いことなんだろう。
「美味しい物、食べようよ」
胡散臭い笑みを浮かべて、物腰柔らかく接するこの男は確実に猫を被っている。
その本性を私達二人は鬱陶しいほど知っているのに、無意味なその態度はなんなのか。
本当に無意味だ。
無意味な時間だ。
早くあいじま食堂に逃げ込みたい。