たったひとりの君にだけ

代わりに、閉まりかけた扉を高階君の大きな骨ばった手が支えていて。
驚きから一変、極上の笑みを浮かべる。

一滴、顔に唾が飛んで来たような気がしたけれど、冗談でも突っ込めるような雰囲気じゃなかった。


「食べさせて下さい!」


そして、一方で、再度同じ台詞を口にする元気な彼に対して、私はすっかり落ち着きを取り戻していた。


「……大したものじゃないけど」

「大したものです!カップラーメンなんかに比べればオムライスはご馳走です!」

「……日頃カップラーメンにお世話になってるくせにその言い草はないでしょ」

「だって、カップラーメンは所詮カップラーメンですから!でも、それほど嬉しいってことです」


なるほど。

と納得しておくのが一番無難な気がした。


「でも、俺の分あるんですか?」

「なかったら誘わないけど」

「あ、それもそうですね」


心配しなくても大丈夫。

かなり多めに作ったチキンライスは、まだ冷凍せずにボウルの中で冷ましてある。
卵も余裕があるしポトフもサラダも融通が利く。

一人暮らしをしていれば、翌日以降を考慮して多めに作るのは言わば常識だ。
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