たったひとりの君にだけ
「まだちょっと時間掛かるから、自分の部屋に戻っててもいいよ。出来たらメールするから」
「え、でも、」
「まだサラダ作ってないし、チキンライスも卵でくるんでないから」
「じゃあ、何か手伝うことありませんか?」
まさかの申し出に一瞬耳を疑った。
けれど、そのキラキラした瞳を見れば、断るのも一苦労だと悟る。
「何か出来ることありませんか?」
微妙に戸惑いを隠せない。
それでも必死で頭を回転させて、常時台所が綺麗であるだろう男が出来そうなことを考える。
「……じゃあ、サラダ作る?卵でくるむのは出来なさそうだから」
「さすがお見通しですね。あの高等技術は俺には無理です」
うん、言われなくてもわかっていますとも。
主食がラーメン。
家ではカップラーメン。
他は外食の自炊ほぼゼロ人間が、上手にオムライスを作れるわけがないってことくらいわかってるよ。
「じゃあ、俺、サラダ作ります」
「了解。でも、自分で言っといてなんだけど大丈夫?包丁使える?刃物だけど。殺傷能力あるけど」
「なッ!それくらい使えますよ!バカにしないで下さいよ!」
「あ~、ごめんごめん」
でも、本音だから仕方ない。
お粥は作ってもらったことがあっても、包丁を一切使わないのだから。