たったひとりの君にだけ
ホワイトソースの入った鍋を隅に寄せて、フライパンを弱火で温めているあいだに隣のサラダ担当の様子を横目で伺う。
お皿にレタスを敷き終えて、ちょうどきゅうりを切り始めているところだった。
けれど、少し手際をチェックしてやろうと思っただけなのに、あまりにも予想通り過ぎてジロジロと見る羽目になってしまう。
「どうしました?」
私の視線に気付いた高階君は、その手を止めてこちらを見る。
「……なんか、きゅうりのサイズ、好みで選べそうだなと思って」
思い切りの嫌味を言った後で、私は自分の作業に戻る。
卵を半分、フライパンに流し込んだ。
「……実は包丁握るの久々で」
「あれ?さっき使えるって大見得張ってなかったっけ?」
「申し訳ございませんでした」
呆気なく謝る彼に思わずクスッと笑みを零しながら、私は卵を焼いていく。
「大学時代、食事はルームシェアしてた彼が作ってたんじゃない?」
「え、なんでわかるんですか?」
「そのきゅうりを見てればわかるよ」
誰が見たって一目瞭然。
そう思いながら、私はチキンライスを投入する。
ここからは手際が命。
「アイツ、めちゃくちゃ料理上手いんですよ。趣味でもあるから、絶対俺の分も作ってくれて。帰りが遅いときはラップかけて冷蔵庫にインですよ」
夫婦か。
「キオナのグラタンは絶品ですよ。頬っぺた落ちます。是非食べてみて下さい」
「機会があればね」
適当に返事をしながら、オムライスがひとつ完成した。