たったひとりの君にだけ

「……で、こっちはあと盛り付けるだけだけど」

「えっ」


濃厚なホワイトソースを上から掛けて、湯気が立つポトフを器に注ぐ。
あとは冷たいサラダがあれば今晩のメニューは完璧なのだけれど。


「……まだだね」

「も、もう少し!」

「いいよ、ゆっくりやって。怪我したらダメだし。こっちはリビングに運んでおくから。あ、面倒ならツナ缶は開けなくてもいいよ」


そう言って、私は食器棚からグラスをふたつ取り出す。


「飲み物は?ビール?ワイン?ウーロン茶?水?」

「あ、じゃあウーロン茶で」

「アルコールじゃなくていいの?」

「はい。帰ったら勉強しなくちゃいけなくて」

「勉強?資格とか?」

「はい、そんなとこです」


エンジニアも大変なんだな、と思いながら、冷蔵庫からウーロン茶とドレッシングを2種類取り出す。

この際だから、ノンアルコールに付き合おう。

眠気に襲われなければ語学の勉強でもやろうと思う。
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