たったひとりの君にだけ

我が家で一番大きなトレーに一式並べて、早々とリビングへと向かう。


「今出来るからちょっと待ってて下さ~い!!」



サラダにこんなに手間取る人も珍しい。
絶滅危惧種は私じゃなくて高階君だと思う。

空返事をしながら新品のランチョンマットを敷いて、その上にメインディッシュから並べていく。
大きめのオムライスを向こう側に、ワンサイズ下を手前に置いた。

そして、どうしたものかとキッチンに戻り様子を伺うと、ちょうど最後の盛り付けに取り掛かっているところだった。

ひとつひとつのパーツは果てしなく微妙でも、全体的な雰囲気で誤魔化そうとしているのが伝わって来る。(トマトもなんだかいびつである)

敢えて口を挟まずに、私は残りの飲み物とグラス、ドレッシングをリビングへと運んだ。

そして、エプロンを畳み、ソファの隅に置く。

すると、『出来ました~!』という元気な声がキッチンから聞こえて来た。

おめでとうと祝福すると、彼はサラダを両手に駆けて来る。

達成感に満ち溢れたオーラ。
偉業を成し遂げた顔だ。


「キッチンの電気消して」

「あ、はい!」


一人暮らしに節電はつきもの。
勿論、言うまでもなく節水も。

自炊をしないならせめて光熱費等は節約しましょう、高階君。
< 266 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop