たったひとりの君にだけ

そして、サラダに全力を尽くした男は、言われた通りの場所に全身全霊を込めた一品を置くと向かい側に腰掛けた。


「このクッション気持ちいいですね」

「そう?」


どうでもいいことに反応するんだなと思っていると、今度はテーブルの上を眺めて、感嘆の声を漏らす。

そして、顔を上げてキラキラとした瞳を向けた。


「すっごいですね!芽久美さん!」

「え?」

「だってこの料理!お店で食べるみたいですね!」


そんなに感動することか。
大袈裟なんじゃないか。

そう思いながらも、自炊をしない人間にとってはやっぱり珍しいのかもしれない。


「すごいなぁ。卵に穴が開いてない」


そこなの?


「そんなに驚く?」

「はい。俺、一度やったことありますけど無残な姿になりました」


だろうね。


「こんなの練習すれば誰だって出来るよ。さ、食べよ。冷める」

「はい!」


小学生のお手本だと思う。

元気よく返事をすると、彼は『いただきます!』と礼儀正しく挨拶をして、丁寧に両手を合わせた。
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