たったひとりの君にだけ

「……瑠奈」

「なんですか~?いいんですか~?」

「世界の人口の半分は男なんだから、いい男はいくらでもいるよ」

「世界の男全員に会うのは無理だから、近場で見極めていかないと」

「別にこんな近場じゃなくても」

「でも、相性いいかもしれないし、トライする価値はあるよね。頑張ってみようかな」


徐々に冗談に聞こえなくなって来たのは。
単純に、私に余裕がない所為か。


「年下は圏外じゃなかったの?」

「最近は年下も可愛くていいなって。ってか、2歳くらいどうってことないよね」

「でも、瑠奈にはもっといい人が、」

「でも、その、もっといい人ってやつが、私にとってはミツオかもしれないじゃない?」


未だ正しく名前を言えないくせに本気だなんて思いたくない。

それなのに、迷いなく言い放つ親友に、返す言葉を見つけられずにいると。


「そうだな。やってみなきゃわかんねー」

「だよね!そう思うよね!腕が鳴るわ~」


ここで会話に割り込むの?

さっきから、マスターの同意のタイミングはヘビーすぎる。
お願いだからこれ以上タッグを組まないでほしい。

そして、瑠奈は首を左右にコロンコロンと傾げながら、ルンルン気分を前面に出す。
そんな大きな瞳で上目遣いをされたら、誰だって吸い込まれてしまう。

そう、きっと、誰だって。


「……瑠奈」

「なあに?」

「……一生のお願い。それだけはやめて」

「ハイハイ、じゃあ頑張って」


思わず耳を疑った。
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