たったひとりの君にだけ
白い箱を手に、黒いダッフルコートを羽織った私は703号室の扉の前に立っていた。
外気が肌に冷たく突き刺さる。
今年数度目の大寒波の所為で、雪国育ちじゃない私にとっては凍えるほどに身に凍みる。
今から好んで外に出掛ける人は少ないだろう。
まして、今日は日曜日の6時過ぎ。
そろそろ、日本国民の多くがサザ○さん症候群というやつに襲われる時間だ。
いつならばこの部屋にいる確率が高いだろう。
そう考えたとき、結局一週間も先に延ばしにしてしまい、カレンダーを一枚捲る羽目になった。
あの日、Quieteから帰った後、ダメ元でいいからと泊まりに来た瑠奈に急かされ、もう一度だけ送ったメールにも夜が明けても返事はなかった。
迷惑メールばかりが無駄に溜まったiPhoneを溜息ながらにテーブルの上に戻すと、そんな私の隣で意外にも瑠奈は『決心は揺らがないでしょ?』と極上の笑顔を向けた。
改めて突きつけられた現実に、一人ブルーな気分で落ち込む余裕はなく、私に任せ切ったブランチを堪能した瑠奈は、用事があるからと言って昼過ぎには帰っていった。
『頑張れ親友!』と男らしく後ろ背に手を振る姿を見て、私がこっそりと笑みを零したことを彼女は知らない。
なんだかんだ言って、何があろうと私の味方でいてくれる瑠奈に心から感謝した。