たったひとりの君にだけ
本音を言えば、この結果に傷付いていないわけじゃない。
裏を返せば傷付く為にメールを送ったようなものだ。
“どうせ返って来ないだろう”
心のどこかどころか全体で思っていた。
それでも私はここにいる。
手が小刻みに震えていることに気付く。
決して寒さの所為じゃない。
社会人一年目のときの大失敗を思い出す。
先輩と一緒に、翌日、お客様のもとに謝りに行ったとき、手が震えてなかなかインターホンを押すことが出来なかった。
だけど、確実に、あのときよりも緊張している。
あのときは逃げることは許されなかったけれど、今は本当に嫌なら尻尾を巻いて707号室に逃げ帰ることも可能だ。
マスター曰く、恋愛は自由。
告うも告わないも勝手。
踏み出すも踏み出さないも勝手。
背を向けるも向けないも、私の勝手。
けれど、それはしない。
私はここから立ち去らない。
だから、お願い。
その顔を見せてよ。
私はゆっくりとボタンを押した。