たったひとりの君にだけ

「ラーメン、食べてる?」

「え?」

「あ、あの、また美味しいラーメン屋さん見つけたかなと思って」

「……そうでもないです」


返される言葉のひとつひとつが、今は酷く胸に突き刺さる。

想像以上だった。
無条件で見せてくれた笑顔がないことが、これほどに苦しいなんて。

それどころか、一度も目を合わせてくれない。


改めて確信する。

高階君は、具合が悪かったわけでもスマホを消失したわけでもない。
メールを返してくれなかった理由は他にあるんだと。

だけど。


どうしてなのかわからなくても。
どうしてと素直に聞くことが出来ない。


やっぱり怖い。

別に、と冷たくあしらわれたら。
もしくは、する必要がないからと言われたら。

会いたくないから、なんて。
ハッキリ言われてしまったら。


ダメだ。
想像するだけでつらい。

耐えられない。



「……あの」

「は、はい」

「用って、それだけですか」



一気に冷たくなる指先。


「だったら、俺、勉強しなきゃいけないので」


目の前が暗くなっていく。

話し掛けられたことに、ほんの一瞬でも気分が上向きになった自分が恥ずかしくて。
酷く、滑稽だと思った。

隔てていた扉は開けられたはずなのに、私達の前には壁があるように思えてならない。
私はここから一歩も近付けない。

明らかな拒絶だった。
それに気付かないほどバカじゃない。

絶望という言葉以外に、何があるだろう。
強く強く、必死に固めはずの決意が脆くも崩れ去っていく。


ねえ。

この状況で、好きだなんて。


誰が言えるの?


ねえ、教えてよ。
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