たったひとりの君にだけ
「……早く、決着をつけたかったの」
「決着……?」
コクリと頷く。
「樹とゴタゴタしたまま、高階君に会いに行きたくなかった。その、……本当は、バレンタイン前に決着をつけて、プリンタルトを渡したかった。でも、当日しか都合つかなくて、あの、私から会いたいって言ったから仕方なくて。だから、終わったらすぐに会いに行こうと思ってて。少しでも胸を張れるような自分でいたかった。……初めて、好きになった人だから」
ただでさえ頼りない声から力が抜けていく。
私は今、一番大事なことを伝えるタイミングを誤ったかもしれない。
けれど、今言おう今言おうと、見計らうような余裕はなかった。
勢いと言うのは不適切だけれど、単純に、ここでやめたらなんの意味もないと。
そう、思ったからだと思う。
なけなしの勇気を、今は出すことが出来たけれど。
「だから、メールが返って来なかったこと、正直、訳がわからなくて」
少し前までは。
たったそれだけのことに。
「信じられなくて、不安になって」
自信をなくして、怖くなって。
「やっぱり、遅かったと思って。……好きになんか、なるんじゃなかったって」
私は本当に、何様のつもりだったんだろう。
もっと早く言えばよかった。
だけど、現実問題、好きだと気付いて想いを告げると決めるまで、一週間しか経っていない。
正しくは、もっと早く気付けばよかったんだ。
だけど、どちらにせよ、これは高階君が私に好意を抱いてくれているという奢りのもとに成り立つ話であり、違うかもしれないと暗雲が立ち込めた瞬間、私の決意は一気に崩れ去った。
それこそ、高階君と同じように。
傷付く必要がないという、確固たる保障があると簡単に一歩が踏み出せる。
けれど、土台がぬかるむと呆気なく揺らいでしまう。
私はなんだかんだいって無意識のうちに、彼から向けられる好意の上に堂々と胡坐をかいていたのだろう。
結局は、何もかも違う君に甘えていた。