たったひとりの君にだけ

人を好きになるって大変だ。


改めて痛感した。
未だ身勝手さ健在の私はさらに俯き、彼の手を離す。




「……素直になんかなれなかったの。高階君は私と全然違うから」




頭上に落ちる戸惑いの声を拾うこともなく、私は心の奥底に居座り続ける想いを吐き出す。



「だって、高階君は、素直だし、あったかいし、ケンカ腰じゃないし、呆気なく別れを告げたりしないし、人を傷付けそうにもないし、家族を大事にしてるし、……優しいし」



そして、何より勝手じゃない。


ここまで来たのなら余すことなく全てを曝け出すべきだと頭の中では重々理解していても。
溢れ出るものが私の決意を確固として邪魔しようとする。


何もかも遠くて届かない。

決めつけたくて決めつけていたわけじゃない。


たった一歩を踏み出すことが怖かった。


結論を急がないなんて、単なる臆病者なだけよ。
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