たったひとりの君にだけ

けれど、思い切り突き放すように言った私の一言にも。
何故か、彼は柔らかな声を漏らした。



「……芽久美さんは、もっと自分に自信を持ってもいいと思うけど……じゃあ、これから自信持って下さい」



時々、彼の思考回路が読めなくなるのは今に始まったことじゃないけれど。

予想外の発言に思わずすっと顔を上げる。
すると、そこには目尻に穏やかな笑みを浮かべる、いつもの高階充がいた。

久々の顔。
しかも、私の荒み切った心を溶かすような。
自分でさえ触れたくない棘を、ポロポロと取り除くような。

まるで、青く広い海だった。



「まずは、素直になれたっていう自信、どうですか?」

「え?」



それなのに、彼の言葉は正反対に唐突だ。

凪のような私の心に大きな波を生む。


私は耳を疑い、眉間に皺を寄せた。



「だって、芽久美さん今、とっても素直だから」



だけど、きっと、私の顔は一瞬で真っ赤だ。



「あとは、初めて好きになった人に好かれたという自信とか」



なんなのよそれ。
一体何を言い出すの、この男は。

と思いつつも、彼には格別ふざけている様子はない。


だからこそ、思う。

顔を右手で半分隠しながら振り返る。


いつだって彼は、私の瞳を真っ直ぐに見つめてあたたかな言葉をくれたことを。
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