たったひとりの君にだけ
「芽久美さん?」
信じらんない。
信じらんない。
しんっじらんない!
「……普通、そういうこと言う?」
「だって、ホントにそう思ったから」
思ったことを思うがままに口にするなんて、絶対に大人のすることじゃない。
「……サイテー」
「確かに寝顔は見られたくないですよね」
「……私も見たけどね」
だから、反撃を試みる。
やられっ放しは性に合わない。
「え?いつですか!?」
「ホールのソファで寝てたことあるでしょ」
日付は覚えてないけれど、あまりにもショッキングだった。
まさにアホ面満開。
おめでたいほどに満開。
私は何も見ていない、そう自分に言い聞かせて、真冬のホールに放置した。
「あれ見られてたんですか!」
「あの時間にあそこを通った人なら誰だって見てるよ」
「あ、あれは芽久美さんを待ってたんですよ!」
「そんなこと言ったって、結局は寝てたんだからバカでしょ」
心ないワードで一蹴すると、罰が当たったかのように激しい咳に襲われた。
ガラガラ声での言い合いはキツイ。
今の今までバカの相手が出来ていたのが言わば奇跡だ。