たったひとりの君にだけ
「大丈夫ですか?」
咳き込む私を見かねたのか背中をさすり始める。
だけど、毎度の如く私はその手を制す。
「……大丈夫、だから」
それでもなお鎮まる気配のない私を見て、高階君は小さく溜息を吐いてこう言った。
「ヤバイと思ったら、ちゃんと病院行って下さいよ」
その息音と声色で、バカに呆れられていると悟った。
だけど、めげない私は即座に反論する。
「……っ、病院、年末年始で、休み、じゃないっ」
「じゃあ、倒れる前に救急車呼んで下さいよ」
ようやく咳が止まって、小声ながらも必死に言葉を紡いだ私に、実に容赦ない一言。
思わずむっとした。
「やだよ。恥ずかしい」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう」
「もうっ、むやみに救急車は呼ばないで下さいって、CMでも流れてるじゃないっ」
「どっちみちあのまま買い物行ってたら道端で倒れてたと思いますけど」
言うようになったな。