たったひとりの君にだけ

少しだけ思い出に浸った後で、トントンと書類を丁寧に揃えた。

時間も時間だし、運よく仕事もキリがいい。
そろそろ実加ちゃんを誘ってあいじま食堂へと出掛けよう。

そう思い、財布片手に立ち上がろうとした矢先、デスク上に置いていたiPhoneが着信を知らせてしまった。

バッドタイミングとしか言いようがない。
その音で、残念ながらメールではないことを知る。

人知れず、決して音にはならない溜息を吐いて、誰だろうと思い、画面を覗く。

すると、そこには知らない11桁の数字が並んでいた。

瞬時に眉間に皺が寄る。

非通知設定以外は可能な限り出ると決めている。
それはただ単純に仕事関連かもしれないからであって。
どうしても私が出ない場合は会社に掛かって来るだろうけど、時間や手間を要するからなるべくなら避けたいところだ。

だけど、それらを踏まえたって、相手が誰かわからないときは誰だって身構えるのは言わずもがな、だと思う。
< 79 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop