たったひとりの君にだけ

「……頭痛くなって来た。えっと、待って。順を追って話してもらおっかな」


うん、最初からそうするべきだったんだわ、と独り言を呟く瑠奈だけれど、どうしてそれが無意味だとわからないのだろう。


「だから、順を追うもなにも、ラーメン食べただけだよ、それだけ」

「ホントにそれだけっ!?」


嘘を吐いてなんの得になると言うのだろう。
私がそんなことするはずないって、18からの付き合いで熟知しているはずなのに。


「ホントにそれだけだから。仕事終わりに奴の行き着けのラーメン屋の最寄り駅で待ち合わせして、奢って貰って、ラーメン談義に華を咲かせて帰った。あ、帰りにマンション近くのスーパーにも寄ったわ。閉店間近だったから惣菜とか安いから買いたいとか言って」

「そういうこと言ってるんじゃないわっ!」


お世辞抜きで、本当にあそこのラーメンは美味しかった。

私が頼んだのは野菜たっぷり味噌ラーメンで、器から零れ落ちそうなほどの大量の野菜が視界に映り込んだ際には本気で驚いたけれど、スープとの絶妙なバランスのおかげで見事に完食していた。
奴がここは歴代1位だと絶賛するのも納得で、店主もとても親切だった。(普段はつかないチャーシューのおまけ付き)

そして、ラーメン談義に華を咲かせるなんて未だ嘗てない経験だったから、非常に有意義かつ楽しかったのは紛れもない事実だ。

今度はネギ味噌チャーシューにチャレンジしてみようかなと思う。
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