たったひとりの君にだけ

だけど私は、それさえ気付かぬ振りをした。


「我が侭だって思ってんだろ」

「思わないと思うの?」

「でも、別れたくなかったらそう考えるのは当然だろ」


けれど、本当は。

私も人のことを言えないのだろう。


きっと、棚に上げてはいられない。
身勝手なのはこちらも同じだ。


それでも、開き直る彼も彼だと思ってしまうのは。


再会した、この僅かな間に。

痛いところばかり突いて来る、そんな樹が憎たらしくて堪らないからだ。
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