少女達は夢に見た。

第12章 夏の思い出

長期休みが過ぎるのはあっという間で、気付けば夏休みも残り1週間となっていた。

相変わらずのうだるような暑さと、しつこいくらいのセミの声で私は少しげんなりしていた。

そんなとき、メールの着信音が鳴る。

それだけで単純な私は気分が晴れた。

ケータイを開いて確認すると笑みが漏れた。

歩乃香からだった。

“夏休みも残り少ないし、せっかくだから4人で遊ばない?”

嬉しいお誘いに気分が浮き足立つ。

誰とは書いていなかったが、歩乃香が4人といえばアキ、柚奈、私と歩乃香の4人のことだ。

明記するまでもなく、それが私達の当たり前だった。

私はニつ返事でオーケーした。

するとまたすぐに着信が。

“ありがとう。2人から返信来たらまた連絡するね。”

どうやら私が歩乃香に返信した第1号だったらしい。




歩乃香から返信が来たのはそれから3日後のことだった。

ある程度予想はしていたけど、“やっぱりな”という感じだった。

柚奈は返信のスピードにムラがあるし、アキに至っては酷いと1ヵ月くらい返事が無かったり、メールの返事はせずに会ったときに直接言われたりする。

これは私がアキにうざがられているわけではなく、どうやら本当に連絡無精なだけらしい。

私よりもアキと長い付き合いで仲の良い歩乃香が言ったのだからまず間違いない。

夏休みもあと4日と迫り、遊びの予定を立てるだけで日が過ぎてしまいそうだと危惧したが、そこも歩乃香が上手く立ち回った。

かくして2日後の8月28日に私達は遊ぶことになったのだ。




待ち合わせは10時半。

4人の家から丁度中間辺りにある“ぴゅあはーと“というマッサージ屋さんの前で待ち合わせをしていた。

私は待ち合わせの10分前に着くように向かった。

“ぴゅあはーと”の前の横断歩道で信号待ちをしていると、反対側の道から歩乃香が歩いてくるのが見えた。

ピンクベージュのフレアスカートが彼女らしくて、私は目の良い方ではなかったがそれが歩乃香だとすぐに分かった。

信号が青になる前に、歩乃香がぴゅあはーとの前に着いた。

すると、信号待ちをしている私に気が付いたようで柔らかな微笑みを浮かべながら控え目に手を振った。

清楚で可愛らしいお嬢様のようだ。

信号がやっと青になり、歩乃香に駆け寄ると、一層可憐に微笑んだ。
  
彼女の周りにマーガレットの幻覚まで見えてきそうだ。

「おはよう!」

「おはよう、一瑠ちゃん。」

「今日の服も可愛いね!」

歩乃香は遠目から見ても華やいで見えるピンクベージュのフレアスカートに、白いブラウス、ブラウンのサンダルを履いていた。

「ありがとう。一瑠ちゃんこそ、今日もおしゃれだね。」

いつも通り褒め合いが始まって照れくさくなる。

多分あとの2人が来るまで最短10分。  

歩乃香とのくすぐったくなるようなやり取りは続くだろう。
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