少女達は夢に見た。
その翌日、友紀ちゃんは部活には来なかった。
同じクラスのカナンに訊けば、うんざりした様子で夏風邪で休み、と答えた。
カナンの態度は本当に分かりやすい。
潔すぎる。
ちょっと友紀ちゃんのことを不憫に思った。
友紀ちゃんはどちらかといえば派手なタイプの人で、正直私も距離をとっていたけど、
昨日のことからの罪悪感もあり、ほっとけないような気がした。
心配していることをカナンに伝えれば、
「じゃあプリント渡しにいってあげれば?」
あっさりとした答えが返ってきた。
「いや私家知らないし!」
「じゃあ地図かく」
私が返事をする間もなく、カナンはスケッチブックといつも一緒に持っているキャンパスノートを破り、さらさらと地図を書き上げた。
無駄のない手早い動きに感心しましたよ。
カナンから受け取った地図は、短時間で書いたとは思えないほど綺麗で、
同時にやる気の無さが滲み出ていた。
実はイラつかれていたのかもしれない。
カナンは大人しいくせに短気だ。
もしかしたら昔なにかトラブルでもあったのかもわからない。
二人とは小学校違うし。
次期部長がいないため、もちろん3送会会議も行われなかった。
少しだけさみしさも感じる。
美術部の通常活動終了時刻はどこよりも早い。
柚奈を待つことなく、そのカナンの性格がありありと写し出された地図とにらめっこしながら、友紀ちゃん宅に着いた。
学校から5分くらいの距離で、多分新築だ。
服部という表札をこれでもかというほど確認する。
「合ってる…よね」
溜め息をついた。
本当に私が来てよかったのか?
友達というほど仲良くはないし、部活の仲間というなら、クラスメートでもあるカナンが行くべきだ。
カメラつきのインターホンをおす勇気が出ない。
だれが出てくるだろうか。
友紀ちゃんが出てきてくれるならまだ良い。
お母さんが出てきたらなんと言おうか。
考えれば考えるほど、インターホンを押す指が遠のく。
しかしここは人通りもそれなりにあるため、いつまでも玄関前で突っ立っているわけにはいかない。
後ろを人が通るたび、居心地の悪さを感じる。
う…。
プリントなんて持って来るんじゃなかった…。
私のノミの心臓が、反応しだした。
もう帰りたい。
帰ってしまおうか。
ドアから1歩、2歩と下がった。
そのとき、わずかな段差に足をつまずかせた。
緊張していたせいか、普段より大きな声が出てしまった。
ええい!!
女は度胸だ!!
読経だ!!
経を唱えるんだ!!
落ち着け自分。
むじょうじんじんみみょうのほうはひゃくせんまんごうにもあいたてまつること――
頭のなかにお経の文字がズラズラとイメージされてきた。
こういうときって普通素数を数えるんじゃなかったっけか…?
でも素数とかまだ習ってないな。
お経も授業で習ったわけじゃないか。
と、下らないことを考え出した頃には、すっかりノミの心臓は落ち着きを取り戻していた。
「……よし」
自分を勇気づけるかのように無理矢理声にだし、大きく息を吸ってから、インターホンを押した。
家に着いてから何分経過していたんだろう。
同じクラスのカナンに訊けば、うんざりした様子で夏風邪で休み、と答えた。
カナンの態度は本当に分かりやすい。
潔すぎる。
ちょっと友紀ちゃんのことを不憫に思った。
友紀ちゃんはどちらかといえば派手なタイプの人で、正直私も距離をとっていたけど、
昨日のことからの罪悪感もあり、ほっとけないような気がした。
心配していることをカナンに伝えれば、
「じゃあプリント渡しにいってあげれば?」
あっさりとした答えが返ってきた。
「いや私家知らないし!」
「じゃあ地図かく」
私が返事をする間もなく、カナンはスケッチブックといつも一緒に持っているキャンパスノートを破り、さらさらと地図を書き上げた。
無駄のない手早い動きに感心しましたよ。
カナンから受け取った地図は、短時間で書いたとは思えないほど綺麗で、
同時にやる気の無さが滲み出ていた。
実はイラつかれていたのかもしれない。
カナンは大人しいくせに短気だ。
もしかしたら昔なにかトラブルでもあったのかもわからない。
二人とは小学校違うし。
次期部長がいないため、もちろん3送会会議も行われなかった。
少しだけさみしさも感じる。
美術部の通常活動終了時刻はどこよりも早い。
柚奈を待つことなく、そのカナンの性格がありありと写し出された地図とにらめっこしながら、友紀ちゃん宅に着いた。
学校から5分くらいの距離で、多分新築だ。
服部という表札をこれでもかというほど確認する。
「合ってる…よね」
溜め息をついた。
本当に私が来てよかったのか?
友達というほど仲良くはないし、部活の仲間というなら、クラスメートでもあるカナンが行くべきだ。
カメラつきのインターホンをおす勇気が出ない。
だれが出てくるだろうか。
友紀ちゃんが出てきてくれるならまだ良い。
お母さんが出てきたらなんと言おうか。
考えれば考えるほど、インターホンを押す指が遠のく。
しかしここは人通りもそれなりにあるため、いつまでも玄関前で突っ立っているわけにはいかない。
後ろを人が通るたび、居心地の悪さを感じる。
う…。
プリントなんて持って来るんじゃなかった…。
私のノミの心臓が、反応しだした。
もう帰りたい。
帰ってしまおうか。
ドアから1歩、2歩と下がった。
そのとき、わずかな段差に足をつまずかせた。
緊張していたせいか、普段より大きな声が出てしまった。
ええい!!
女は度胸だ!!
読経だ!!
経を唱えるんだ!!
落ち着け自分。
むじょうじんじんみみょうのほうはひゃくせんまんごうにもあいたてまつること――
頭のなかにお経の文字がズラズラとイメージされてきた。
こういうときって普通素数を数えるんじゃなかったっけか…?
でも素数とかまだ習ってないな。
お経も授業で習ったわけじゃないか。
と、下らないことを考え出した頃には、すっかりノミの心臓は落ち着きを取り戻していた。
「……よし」
自分を勇気づけるかのように無理矢理声にだし、大きく息を吸ってから、インターホンを押した。
家に着いてから何分経過していたんだろう。