少女達は夢に見た。
「な…なによ」


「いやー?一瑠ちゃんって意外と熱血なんだ?」

「なんでもいいでしょ」

熱が入ると周りが見えなくなる…のは自覚済み。

らしくないのは分かってるから触れないでよ。


ばつが悪い。





友紀ちゃんの閃きと、私の修正。


シナリオ作りは特になにも問題なく順調に進んでいった。


「でもやっぱりイメージ違うよね」


シナリオが大まかに書かれたスケッチブックと私を見比べて言う。


「なにが」


空になったオレンジジュースをストローでズコズコ音を立ててすすりながら。


よく子供がファミレスとかでやってるやつだ。


いまにストロー噛みだすぞ、絶対。


「最初、もっとクールな子だと思ったんだけど」

ほら噛みだした。


「冷たいってこと?まあよく言われるけどね」


「一瑠美人だし」


「な、なにいきなり!?」

つい声が高くなってしまった私を友紀ちゃんが口角だけを上げて笑う。


なんでこの子はこうも人とズレてるのかな。


「だから話しかけにくいオーラがあるのだよ」


「クラスみんなの前で大声で呼んだくせに?」


「…てへ!」


高い声だしたって可愛くなんてないぞ…!


「それに、美人じゃないし」


友紀ちゃんの目にどんなフィルターかかってるかは知らないけど。


私なんかより友紀ちゃんの方がずっと美人さんだ。


………喋らなければ。


「なんで?一瑠十分綺麗だよ?」


「ごめん意味がわからない」


「そこで謙虚にいくところが一瑠だよねー」


認めたらただの自意識過剰だと思うんだけどな。

「彼氏とかいないの?」

「いきなり?」


「本音DE・ガールズトーク!!」


私を無視して番組コールが行われた。





それにしても、最近こういう話のネタが、妙に増えた気がする。


やっぱりお年頃だから?

「友紀ちゃんはいないの?」


「え?友紀?えへへー」

「ごめんやっぱいいよ」

「なんで!?」


抗議の熱い眼差しを送る。


でもだって他人の恋事情とか、本当は興味ない。

聞いても楽しくないし、関心だってない。


だいたい好きじゃない。

噂話とか、そういうもの全部。


あの…斉藤さんたちみないな女の子の塊に、参加したくない。


差別?


分からないけど、どんどん周りに置いていかれるような気がして、それをわざわざ自分から実感したくない。


中学生らしくないのかな?


「意外と可愛いんだね」

さっきまで子供みたいに拗ねてたくせに、いきなり大人っぽく言った。


「どういう意味」


真顔で見つめ合う。


緊張感が保てなくなった頃


頭にふと柔らかい感触が伝わった。


状況が掴めないよ。


友紀ちゃんは変わらずにゆっくりと撫でるだけ。

うつ向いてしまう私には、彼女がどんな顔をしているかが分からない。


自分より子供っぽい人に頭を撫でられるのは、ちょっとどころじゃなく落ち着かない。


だけど嫌じゃない私は、

…私の方こそ、子供なのかもしれない。



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