Under The Darkness
「アイツが怖いんもいけずなんも、いつものことやで、みぃちゃん。栞はな、心臓と心が鉄で出来とんのや」
悠宇は思いっきり顔を顰めて、私に同意を示してくれたんだけど。
「あら。悠宇もその口縫い付けて欲しいん?」
うふふ、と嗤いながら、栞ちゃんは悠宇の唇を容赦なくムニッとつまみ上げた。
「いででででっ! 強烈な女やな、栞。その目怖い。やめて。ほんまにやられそうで夜寝られへんくなる」
「アホやなあ、うちはいつでも本気やないの」
栞ちゃんの手を振り払った悠宇は、ひりつく唇を押さえながら、完全に逃げ腰になっていた。
私、おかしくて。
唇をクスクスと綻ばせながら、楽しい気持ちで息が詰まりそうになる。
3人で居るときはいつものこんな調子で、嬉しくて。
楽しくて、嫌なことも3人一緒にいると忘れられて。
悠宇と栞ちゃん、2人がいたから私は今、笑っていられるんだとはっきり感じる。
ふと京介君に目を向けると、彼は扉に凭れながら我関せず、じっとこちらに視線を向けたまま静観を貫いている。
私を見つめるその眸が、淡い笑みを浮かべているようにみえた。