Under The Darkness
「でも、お父さん優しいよ。ウソなんてつけへんし。めっちゃ血ィ吐いてんで? 普通心配するやろ?」
「あー、こりゃ騙されるわ。心臓発作でなんで血ィ吐くのん。東京、どうしても行く言うんやったら、うちも大学東京にするわ。とにかく、あの京介いう男はいけ好かん。近付いたらアカンで。なんや危ない気ィする」
栞ちゃん、わたしと同じガウン姿でチェアに座りながら、手にはビール。
私も桃の缶チューハイに口をつけながら、栞ちゃんの忠告に首を縦に振った。
「うん。顔怖いし、言動も恐ろしいし、京介君嫌いや」
――嫌い。
異母弟だけど、私のことを助けてくれた恩人だけど、それもみんな私に復讐するためのものだった。
私は京介君に憎まれてる。
余計な心配させたくないから、そんなことまで栞ちゃんには言えないけれど。
怖い弟だけど、それでも世にある普通の姉弟みたいに仲良く出来たら、本当は嬉しいのに。
それを望んじゃダメなのかな。
モヤモヤとそんなことを思いながら、私はぐいっとチューハイを煽った。