Under The Darkness





 私は馬淵邸を飛び出して辺りを見回した。

 悠宇が乗ったタクシーが来てないか探したんだ。すると、一台のタクシーが目の前で止まった。


「みぃちゃん!」


「悠宇!」


 後部座席の扉が開き、悠宇が身を乗り出して「はよ乗れ!」と私の腕を掴んだ。

 私は悠宇の乗るタクへと引きずり込まれる。


「みぃちゃん! みぃちゃん!!」


 乗った途端、悠宇にぎゅうっと抱きつかれた。

 私を抱きしめる思いの外強い悠宇の力に、私は彼をもの凄く不安にさせていたのだと知り、自責の念に駆られてしまう。

 悠宇の背中に手をまわし、ポンポンと軽く宥めるように叩いた。


「……ごめんな、悠宇。また心配かけてもうたね」


「ええねん。みぃちゃんが無事やってんから。もう大丈夫、心配ないからな。事務所に部屋手配してもろた。みぃちゃんも知っとる事務所に一番近いあのマンションや。セキュリティ万全なとこやし。オレもしばらくそこおるから、みぃちゃんのこと守ったる」


 悠宇の言うセキュリティ万全なマンションとは、撮影で東京へ行った際の滞在場所となるいつもの部屋のことだった。

 こじんまりとしたワンルームのマンションだが、フロントには警備さんが24時間待機してるし、もちろん入り口にはロックがかかっていて不審者なんて入れない。事務所が所有しているマンションの中で一番セキュリティがしっかりしているところだった。

 悠宇、分かっててそこにするよう担当の鈴木さんに言ってくれたんだろうな。

 私は悠宇に感謝した。



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