Under The Darkness




 私を攫った豪の場合もそうだ。

 私がクウォーターで珍しい容姿だった上に、あまり人とは関わらず喋らなかったものだから、大人しい女だと勘違いした。

 何度も何度も口説かれて、その度にはっきり『嫌い』って言ってたんだけど、それでもしつこく付きまとわれて。


 ――嫌い、近付くな、警察呼ぶで、キモイ、死んでまえ。


 ありとあらゆる罵詈雑言を駆使しても、あの男は私の前に現れた。

 日本語が全く通じてない気がしてゾッとした。

 渾身の力で思いきり蹴り飛ばしても、『可愛いなあ』って嬉しそうにヘラヘラ笑ってたんだ。

 ゾッとした。

 底冷えするような恐怖心を味わって、それからは話しかけられても無視を貫いていた。


 でもアイツ、また現れた。

 母が亡くなって、例の如く自宅へ押しかけてきて、また告白してきて。

 とうとう私はキレてしまった。


『好きや言うんなら、相手の状況少しは考えてくれんか! 見てみいや、喪中ってなっとるやろが! ママ、死んでしまってすぐに告白してYES言ってもらえる思うんか! 自分勝手にストーカー紛いな付きまといとかして……アンタみたいなクソ野郎、大っ嫌いや!! 二度と来んな! 死んでまえドアホ!!』


 そしてそのまま、逆上した豪に拉致られてしまったんだ。


 庇護者が居なくなったのをチャンスと思ったのかも知れないし、私の短気が起こした自業自得だったのかも知れない。


 でも、知らずに私は、アイツにチャンスを与えてしまっていたのかなって考えて、泣きたくなるほど悔しくなった。

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