Under The Darkness




 目覚めたとき、目の前にはママが居て。

 安心して大泣きする私にママは言った。


『可哀想に。きっと鬼を見たんやね。今日お邪魔したあのお屋敷には、怖い鬼が住んどるんや。でもな、ママがおるからもう大丈夫。あのお屋敷にはもう二度と行かんからな。それにな、鬼なんぞ出てもママが箒《ほうき》で叩いて退治してやるから怖ないで』


 そう言って、涙を滲ませながらママは微笑んだ。

 ママは強い。

 そこいらの男なんかよりずっと。

 だから、その言葉に安心して、いつの間にか記憶の中に埋もれてしまっていた。


 けれど、京介君の『昔一度会ったことがある』っていう言葉で、やっと今思い出した。分かってしまった。


 鬼が住むあのお屋敷は、実はこの場所で、私を殺そうとした美女は、京介君のお母さん、本妻さんだったんだ。


 そう考えたら、私の存在が殺したいほどに疎ましいのも頷けた。


「あ、あんな、京介君のお母さんは?」


 このお屋敷のどこかに、あの酷く綺麗で恐ろしい鬼が居るのかと思うと全身に緊張が走った。身体が小刻みに慄え出す。



「……ああ、母は、10年ほど前に亡くなりました」


「え? ご病気?」


「いえ。自殺です」


 その言葉に愕然とした。


 あの女性が自殺した。

 それって、私達親子のせい?

 彼女を追い詰めた存在は、私達母子のはずだから。

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